
※この記事は、当事務所が実際に対応した事例を基にしていますが、ご本人やご家族を特定できないよう、氏名、住所、財産内容、家族関係、日付などの一部を変更・省略しています。
「自分の希望に沿って財産を引き継いでもらいたい」
今回ご相談いただいたのは、県内にお住まいの女性です。
ご本人には、預貯金、不動産、家財や思い出の品などがあり、将来の相続について、次のような希望をお持ちでした。
- 預貯金は、複数のお子さんに公平に引き継いでもらいたい
- 思い入れのある不動産は、特定のお子さんに引き継いでもらいたい
- 絵や画材などの美術関係の品は、大切に活用してくれる家族に任せたい
- 相続手続を円滑に進めるため、遺言執行者を決めておきたい
- 財産の分け方だけでなく、家族への感謝も伝えたい
そこで、ご本人のご希望を確実に実現し、将来の相続手続における家族の負担を減らすため、公正証書遺言を作成することになりました。
最初に行ったのは家族関係と財産の整理
公正証書遺言を作るときは、最初から遺言書の文章を考えるわけではありません。
まず、戸籍などにより相続人を確認し、次に、ご本人が所有する財産を一つずつ整理します。
今回の手続では、主に次の資料を確認しました。
- 戸籍関係書類
- 印鑑登録証明書
- 不動産の登記事項証明書
- 固定資産税の課税明細書
- 預貯金通帳
- 生命保険に関する資料
- 本人確認書類
特に注意が必要なのが、不動産の所有者です。
ご本人が住んでいる建物であっても、必ずしもご本人名義とは限りません。家族名義の建物や土地を、ご本人の遺言によって相続させることはできないため、登記事項証明書などで所有関係を正確に確認しました。
また、生命保険についても、死亡保険金の受取人が指定されている場合には、通常の相続財産とは取扱いが異なります。預貯金や不動産と分けて整理することが大切です。
ご本人の希望を遺言内容として整理
面談を重ねた結果、遺言の主な内容を次のように整理しました。
- 債務、葬儀費用、遺言執行費用などを差し引いた預貯金等を、子どもたちに一定の割合で相続させる
- それ以外の財産は、特定のお子さんに相続させる
- 遺言執行者として、家族の一人を指定する
「誰に、どの財産を、どの割合で引き継いでもらうか」を明確にするだけでなく、遺言者が亡くなった後に必要となる費用も考慮した内容にしました。
遺言執行者に指定されたご家族からは、将来の手続実務について、当事務所が委任を受けて支援する予定です。
遺言執行者を家族にする場合でも、不動産の名義変更、預貯金の解約・払戻し、相続人への通知など、多くの手続が必要になります。あらかじめ専門家へ相談できる体制を整えておくことは、遺言執行者となるご家族の安心にもつながります。
遺言には入れない事項も整理
相談の過程では、すべての希望を遺言に盛り込むのではなく、遺言に記載する事項と、別に対応する事項を分けることも大切です。
今回も、ある施設の利用・承継に関する事項について検討しましたが、関係先への確認や手続が別途必要になるため、最終的には遺言の内容には含めないことにしました。
遺言に書けば、すべての希望が実現できるとは限りません。財産の所有関係、契約内容、施設の規約などを確認し、それぞれに適した方法を選ぶ必要があります。
家族への思いを伝える「付言事項」
今回の遺言では、財産の分け方だけでなく、「付言事項」も作成しました。
付言事項には、原則として財産を相続させる法的効力はありません。しかし、遺言者がなぜそのような分け方を選んだのか、家族にどのような思いを持っているのかを伝えることができます。
ご本人から手書きのメモをお預かりし、お子さん一人ひとりへの感謝、家族で過ごした思い出、不動産を特定のお子さんに引き継いでもらいたい理由などを丁寧に整理しました。
文章を作成した後は、ご本人だけに確認していただき、修正したい箇所をご自身で記入してもらいました。ご本人の言葉や気持ちを損なわないよう、何度か修正を重ね、公正証書にふさわしい文章に仕上げました。
遺言の内容によっては、財産の取得額に差が生じることがあります。そのような場合、付言事項で理由や感謝を伝えておくことが、家族間の誤解や感情的な対立を防ぐ一助になることがあります。
公証人との調整と証人の準備
公正証書遺言の作成には、証人2名の立会いが必要です。
当事務所では、必要書類を整理して公証役場へ提出し、公証人から送付された遺言案について、次の点を確認しました。
- 遺言者、相続人、遺言執行者の氏名と続柄
- 生年月日や住所
- 財産の分け方
- 遺言執行者の権限
- 付言事項の内容
- 証人の氏名、住所、生年月日
修正事項がある場合は、公証人とメール等で調整し、ご本人にも最終案を確認していただきます。
今回も、公証人、ご本人、証人の日程を調整し、正式作成の日を決定しました。
正式作成当日の流れ
正式作成当日は、遺言者本人と証人2名が公証役場へ出向きます。
一般的には、次のような流れで進みます。
- 本人確認と必要書類の確認
- 公証人による遺言内容の確認
- 遺言書全文の読み聞かせまたは閲覧
- 遺言者による意思確認
- 遺言者と証人による署名等
- 公証人による証書の完成
- 正本・謄本等の受領
今回の手続では、付言事項をご本人に読み上げていただくことになりました。そのため、事前に最終版をお渡しし、無理なく読み上げられるか、内容が現在のご意向と一致しているかを確認しました。
公正証書遺言は作成までの準備が重要です
公正証書遺言は、公証人が関与して作成し、原本が公証役場に保管されるため、形式の不備や紛失、改ざんなどのリスクを抑えられる方法です。
一方で、作成までには、次のような準備が必要です。
- 相続人の確認
- 財産の調査・整理
- 財産の分け方の検討
- 必要書類の収集
- 遺言執行者の選定
- 証人2名の確保
- 公証人との文案調整
- 付言事項の作成
- 正式作成の日程調整
特に、ご本人名義ではない財産を遺言に入れてしまったり、預貯金の分け方が曖昧だったりすると、ご本人の希望どおりに手続できない可能性があります。
遺言は家族への大切なメッセージです
遺言書は、単に財産の分け方を決める書類ではありません。
これまで支えてくれた家族への感謝を伝え、残された家族が迷わず手続を進めるための「道しるべ」にもなります。
行政書士伊藤公好事務所では、ご本人のお話を丁寧に伺い、相続人・財産の確認、遺言案の作成、公証役場との調整、証人の準備、付言事項の作成まで、公正証書遺言の作成を一貫してサポートしています。
「不動産を特定の家族に引き継いでもらいたい」
「子どもたちに公平に財産を残したい」
「家族に自分の思いを伝えたい」
「遺言執行を任せる人について相談したい」
このようなお悩みがありましたら、早めにご相談ください。ご本人の希望とご家族の状況に合わせて、適切な遺言の方法を一緒に考えます。
行政書士伊藤公好事務所
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この記事を書いた人 Wrote this article
伊藤 公好
行政書士の伊藤公好(いとう きみよし)と申します。 奥州市で行政書士事務所を開設しました。 建設業許可申請、補助金申請、会社設立、各種許認可、相続・遺言などでお困りの方は気軽にご相談ください。